浄水場での緩速ろ過を支える汚砂処理装置を紹介
人手不足を解消し、ろ過池維持管理の効率化を実現
緩速ろ過とは
「緩速ろ過(かんそくろか)」は、浄水場で古くから採用されている自然の浄化作用を活かした水処理方式です。
河川水や地下水などの原水を、ろ過砂の層を通してゆっくりと浄化することで、化学薬品をほとんど使わずに安全でおいしい水をつくることができます。
ろ過速度は1日あたり2〜6m³/m²程度と非常にゆっくりで、 砂層の表面に形成される「生物膜(シルト層)」が、 細菌や有機物を分解・除去する働きを持っています。環境負荷が少なく、安定した水質を維持できることから、 現在でも全国の浄水施設で重要な役割を担っています。
緩速ろ過の仕組みとろ過池の構造
緩速ろ過池は、以下のような層で構成されています。
- 上水面(原水層):原水が砂層へ浸透する層。
- 生物膜層(シルト層):砂表面に形成される薄い膜で、微生物が汚れを分解。
- 砂層:粒径0.3〜0.5mm程度の砂で構成され、懸濁物を物理的に捕捉。
- 砂利層・集水層:ろ過された水を集め、下流へ送る層。
ろ過池では、物理的ろ過・生物的分解・吸着作用が同時に働きます。
しかし、運転を続けるうちに砂層上部に汚れが蓄積し、
ろ過能力が徐々に低下していきます。
そのため、定期的なメンテナンス――すなわち「汚砂の掻き上げ」と「砂の再生」が欠かせません。
汚砂の処理が「ろ過性能」を左右する

緩速ろ過の安定稼働を維持するには、砂表面に蓄積した汚砂を定期的に除去し、再生する作業が必須です。
汚砂の除去作業はこれまで人手に頼る部分が多く、時間と労力がかかるのが課題でした。
また、作業者の高齢化や人材不足が進む中、「効率的で安全に行える汚砂処理設備」が求められています。
ヤマモトロックマシンでは、こうした課題を解決するために、汚砂の掻き上げ・運搬を効率化する機械システムを開発。
人手不足の解消と業務効率の大幅アップを実現し、現場の負担を減らしながらろ過池の安定稼働を支えています。
製品紹介1. 砂掻上機 ― 均一で精度の高い掻き上げを実現
緩速ろ過池の上部に堆積した汚砂を一定の深さで掻き取る装置が、ヤマモトロックマシンの「砂掻上機(すなかきあげき)」です。機械が池の上を自走しながら、砂表面を均一に掻き上げることで、人手では難しい正確な掻き取り作業を自動で行います。
これにより下記の3つを実現します。
- 掻き取りのばらつきを防止
- 作業時間の大幅短縮
- 作業者の安全性向上
掻き上げられた砂は洗浄・分級工程に回され、再びろ過砂として再利用可能。現場の条件やろ過池サイズに合わせて設計可能なため、 新設から更新まで幅広い導入実績を持っています。

製品紹介2. 砂運搬車 ― 掻き上げた砂を効率的に搬送
掻き上げた砂を再生工程に送るには、効率的な運搬システムが欠かせません。ヤマモトロックマシンの砂運搬車は、砂掻上機と連動して動作し、掻き上げ後の砂をスムーズに搬出します。
これにより、従来人力で行っていた重労働を大幅に削減。 構内レイアウトに合わせたカスタマイズ設計も可能で、 限られた作業スペースでも安全かつ確実に砂を運搬できます。
防錆・防水性に優れた構造を採用し、長期的な安定稼働とメンテナンス性の向上を両立。結果として、作業効率の向上と人員負担の軽減に貢献しています。

製品紹介3. 小規模向け砂掻上機「サンドボーイ」
――人力作業の自動化で小規模施設の負担を軽減
中小規模の浄水場では、これまで砂掻き作業を人力で行うケースが多く、時間も労力もかかる上、作業者への負担が大きな課題でした。こうした現場の声をもとに開発されたのが、小規模向け砂掻上機「サンドボーイ」です。
モーター駆動により砂面を均一に掻き上げる機構を搭載し、人力作業に比べて作業効率を大幅に向上。
小型・軽量設計で設置も容易なため、小規模浄水場でも導入しやすい機械化ソリューションです。
導入現場からは、「作業時間が半減した」「スタッフ1〜2名で作業が完結するようになった」など、人手不足の解消と業務効率アップの両立を実現したと高い評価をいただいています。

緩速ろ過の持続的運用を支えるトータルサポート
ヤマモトロックマシンは、これらの汚砂処理機械を単体で提供するだけでなく、掻き上げ → 運搬 を最適化するシステム提案を行っています。現場のレイアウトや処理能力に応じてカスタマイズ設計を行い、限られた人員でも運用できる効率的な維持管理体制を実現。
緩速ろ過という“自然の力を活かす技術”を、機械の力で持続可能な形に進化させることが、私たちヤマモトロックマシンの使命です。