無発破工法の革新|ビッガー・ダルダ工法が安全で環境に優しい工事を実現
無発破工法とは?
無発破工法によって、爆薬を使用せずに岩石やコンクリートを破砕することができます。爆発による騒音や振動が発生しないため、周囲の住民や建物への影響を最小限に抑えられます。楔(くさび)を使用した割岩法(ビッガー工法)や化学膨張剤で破砕する方法(化学膨張剤工法)、水圧を利用した破砕法(水圧破砕工法)が、蒸気圧で破砕する方法(ガンサイザー)などが無発破工法の代表的な手法です。無発破工法は都市部や環境保全が求められる場所での採用が増えており、安全で環境に優しい施工を実現しています。
従来の発破工法との違い
従来の発破工法は、爆薬を使用して岩石やコンクリートを一気に破壊する方法です。大量の岩や構造物を効率的に処理できる反面、大きな振動や騒音が発生するため、周囲の住民や建物、自然環境への影響が懸念されます。また、爆薬を扱うため、安全管理を徹底しなければなりません。
一方、爆薬を用いない無発破工法は、発破工法と比べて破砕時の騒音や振動が小さいです。そのため、無発破工法は都市部の狭い現場や安全性が特に重要視される場所での作業に適しています。工事環境の制限が厳しい場合でも、より柔軟で応用が効く工事が可能です。
無発破工法のメリット
無発破工法のメリットは多くありますが、おおよそ以下の5つに集約できます。これらのメリットがあることから、無発破工法は都市部や住宅密集地、地下における工事などで広く活用されています。
安全性の向上
無発破工法では爆薬を使用しないため、作業現場での爆発事故や火災事故を心配する必要がありません。作業員の安全性が大幅に向上し、周囲の人々やインフラに対してもリスクの低い施工が可能です。
振動・騒音・飛石の抑制
従来の発破工法のように爆破による大きな振動・騒音がなく、飛石の発生も抑制されます。周囲の住民や隣接する建物、交通インフラへなどに与える影響を軽減できます。
環境への配慮
無発破工法は、発破工法と比べて粉塵や汚染物質の発生が少ないため、環境への負荷を抑えられる工事手法です。振動や騒音によって生態系や自然環境へ与える影響がほとんどなく、環境保全が重視される場所でも施工できます。
正確な作業が可能
無発破工法では爆薬を使用しない代わりに、機械的または化学的な手法を用います。爆破よりも制御しやすく、割りたい部分を正確にコントロールできます。都市部や地下工事において高い精度が求められる施工に最適です。
法規制の回避
発破工法では火薬類取締法による規制を受けますが、無発破工法はこれに該当しません。発破工法を採用する場合と比べて法的手続きや許認可が少なく、施工までの準備や許可取得の時間を大幅に短縮することができます。結果として、工期短縮やコスト削減にもつながります。
無発破工法が求められる背景
無発破工法が求められる背景には、都市部での工事増加、安全性への配慮、環境問題への関心、法規制の強化などが挙げられます。以下、それぞれの要因について解説します。
都市部での工事増加
都市化が進む中で、密集した地域でのインフラ整備や建築工事が増加しています。こうした環境で発破を使用すると、爆発時の振動や騒音が周囲の建物や住民に悪影響を与える可能性が高いです。そのため、爆破を伴わない無発破工法の需要が高まっています。また、無発破工法は狭い現場でも安全に作業ができることから、都市部での工事に適した工法といえるでしょう。
安全性への配慮
工事現場での安全性確保が求められる中、爆薬を使わずに施工できる無発破工法が重視されています。特にトンネル工事では、坑口の近くに民家や道路、線路などが存在することが多く、発破による影響を避けるためには無発破工法が有効です。また、地下工事では発破が使用できないケースもあり、爆薬を使わずに安全に作業を進められる無発破工法が広く採用されています。
環境問題への関心の高まり
環境問題への関心が高まっていることから、工事による周囲環境への影響を最小限に抑えたいというニーズが増しています。無発破工法は、発破工法と比べて粉塵や振動、騒音、飛石などの発生が少ないため、自然保護区域や景観保護が求められる地域においても使用できる工法です。
規制の強化
発破工法に対する法規制が年々厳しくなっていくにつれ、無発破工法を採用する傾向が強まっています。無発破工法を採用することで許認可等の手続きを回避し、規制対応の手間を省くことが可能です。工期全体の短縮につながり、コスト削減効果も期待できます。
代表的な無発破工法
無発破工法には、様々な種類があり、それぞれの現場や状況に応じて適した方法が選ばれます。代表的な工法として、ビッガー工法、化学膨張剤工法、水圧破砕工法などがあります。以下でそれぞれの特徴について解説します。
ビッガー工法(楔式割岩工法)
ビッガー工法とは、油圧式の楔(くさび)を使用して岩を割る割岩工法の一種です。割岩力が非常に高く、岩石やコンクリートに楔を打ち込むことで割れる方向をコントロールできます。発破工法よりも騒音や振動が小さいため安全性が高く、都市部や住宅密集地域といった周辺環境への配慮が必要な現場でも使用可能です。
化学膨張剤工法
化学膨張剤工法は、特殊な化学膨張剤(静的破砕剤)を岩やコンクリートに開けた穴に注入し、薬剤の膨張力によって破砕する方法です。ゆっくりと膨張させて砕くため、振動や騒音がほとんど発生しません。特に周囲環境への影響を最小限に抑えながら作業を行いたい場所や、精密な作業が必要な現場での利用が効果的です。
水圧破砕工法
水圧破砕工法は、高圧の水を使用して岩盤やコンクリートを破砕する方法です。岩盤に割れ目を作って化学物質を含んだ水を高圧ポンプで送り込み、その衝撃によって岩を崩します。爆薬を使用しないため大きな爆発や振動が発生せず、作業員や周囲の安全性を確保しやすいです。周辺環境への配慮が必要な現場に適しています。
無発破工法の適用例
無発破工法は、騒音や振動を抑える特性から、都市部の建設現場や河川工事、道路工事、コンクリート構造物の解体など、さまざまなシーンで活用されています。ここでは、無発破工法の具体的な適用例について解説します。
都市部の建設現場
都市部の建設現場においては、無発破工法が特に有効です。建物が密集した地域では、従来の発破工法だと騒音や振動が問題になりやすいため、無発破工法を採用するのが適切です。周囲の住民や建物への影響が抑えられると同時に、工事の並行作業が可能となり、交通規制や立ち入り制限も最小限で済みます。結果として、工期全体の短縮にもつながります。
河川工事や道路工事
河川工事や道路工事でも、無発破工法の利点が活かされています。とりわけビッガー工法は、振動や騒音が問題となる環境での使用に適しており、周囲の自然環境や生態系への影響を抑えるのに役立ちます。自然環境保護と作業の効率化を両立させたいなら、無発破工法の採用は不可欠だといえるでしょう。
コンクリート構造物の解体
コンクリート構造物を解体する際には、無発破工法によって安全を確保しながら作業の効率化を実現できます。例えば、基礎解体ではビッガーやダルダが広く活用されています。(スーパー)ビッガー工法は、低振動・低騒音で硬岩やコンクリートを破砕できるため、周囲環境や作業員の安全性に配慮しつつ効率的な解体が可能です。ただし、スーパービッガーは大型のため構造物内部での使用には向いていません。
ヤマモトロックマシンの無発破製品紹介
ヤマモトロックマシンでは、都市部や環境に配慮した無発破工法に対応するための製品を提供しています。ここでは、超大型油圧式割岩ビッガーと小型油圧式割岩機ダルダを紹介します。
超大型油圧式割岩ビッガー
土木建設工事において、岩盤の破砕は従来、火薬による爆破や大型ブレーカーを使用する方法が一般的でした。しかし、近年では「無騒音」「無振動」「安全性」が求められる現場が増加し、従来の方法だけでは対応が難しくなっています。そこで開発されたのが、超大型油圧式割岩機「ビッガーHRB-1000, HRB-1700」による無発破割岩工法です。
「ビッガーHRB-1000, HRB-1700」を用いた施工は、爆破を伴わない「低騒音」「低振動」を実現しながら、「作業性」と「経済性」にも優れた画期的なメソッドです。特に中硬岩以上の小・中規模の掘削工事に適しており、仕組みがシンプルなため取り扱いも容易です。
ビッガー工法は狭い作業環境でも安全に使用でき、近くで他の作業を並行して進めても問題ありません。発破工法よりも正確に破砕をおこなえることから、ミスの発生を防ぎ作業効率を高めます。
HRB-1000 , HRB-1700
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小型油圧式割岩機ダルダ
ダルダは、無振動・無騒音でクリーンな破砕作業に適した小型軽量さく岩機です。小型ながらも最大830トンの破砕力を発揮するため、幅広く活用できます。耐久性にも優れており、世界各国で長年使用されている人気モデルです。油圧ジャッキによるくさびの単純圧入によって動作し、シリンダー部からは振動や作動音が発生しません。都市部や騒音規制のある現場でも安心して使用できます。
※ダルダは油圧ジャッキによって楔の単純圧入をする機構となっており、割ることしかできないため、孔あけは別の機械が必要になります。
ダルダ
※(注1) ダルダは割るためだけの機械です。孔あけは別の機械が必要となります。 |