さく岩機の最適な選び方を老舗削岩機メーカーが解説
さく岩機は、硬い岩盤や自然石を削孔するために用いられます。建設現場や鉱山、トンネル工事などで使用されていますが、それぞれの用途に最適な機種を選ぶことが重要です。そのためには、さく岩機とブレーカーの違いや、手持ち式や搭載式といった種類ごとの特徴を理解しておく必要があります。この記事では、さく岩機の基礎知識から選定基準までを詳しく解説し、最適な選び方を紹介します。
さく岩機とは?
さく岩機とは、自然石やコンクリートなどに削孔する(掘削して穴を開ける)ための機械です。岩石の除去作業が必要なトンネル工事や鉱山での採掘、建物の解体工事で広く活用されています。さく岩機は金属の棒を繰り返し打ちつけることにより、硬い岩石も削ることができます。打撃と回転を組み合わせて削っていくため、効率的な作業が可能です。ただし、さく岩機は削孔に特化した機械であるため、ブレーカーやハンマードリルのような岩石やコンクリートの粉砕(はつり)には適していません。
さく岩機が使われる業界と用途
さく岩機は、建設現場、法面工事現場、鉱山、採石場、トンネル工事、水中工事、石材加工など幅広い分野で使用されています。ここでは、さく岩機が使われる業界と用途について詳しく解説します。
建設現場
建設現場では岩石を削孔する作業が多くあるため、さく岩機は欠かせない機械です。
硬い自然石やコンクリートを削孔する際にさく岩機を使用すれば、従来の手作業に比べて作業効率を大幅に向上させることが可能です。作業時間の短縮だけでなく、高精度の削孔も実現します。
法面工事現場
法面工事現場では、さく岩機を使用して法面に穴を開け、そこにロックボルトを挿入して地盤を強化します。崩れやすい地形や傾斜地での工事では、斜面の崩落を防ぐために重要な工程です。さく岩機を使用することで、法面工事におけるアンカー施工の効率性と安全性が向上します。
鉱山や採石場、トンネル工事
鉱山や採石場、トンネル工事での発破工法において、さく岩機は非常に重要な役割を果たします。岩石に爆薬を装填するための穴を開ける作業では、さく岩機の強力な打撃力と回転力が欠かせません。硬い岩盤さえも迅速に穴を開けることができ、作業の安全性と効率性を高めます。
水中工事
水中工事でも、さく岩機は不可欠なツールです。河川や海中の既存構造物を撤去したり、新たな施設を設置したりする際に、空圧で動作するさく岩機が使用されます。水中での使用に
対応した設計によって高いパフォーマンスと耐久性を発揮し、効率的に作業を進めることが可能です。作業時間を短縮すると同時に、水中工事の安全性にも寄与します。
石材加工
さく岩機の優れた削孔能力は、自然石の切り出しや成形に有用です。特に大きな岩石を細かく分割したり、精密な穴を開けたりする用途に適しています。さく岩機を使いこなすことで、石材加工の効率と品質を大きく向上させます。
ブレーカーとの違い
さく岩機は穴を開ける目的で、ブレーカーは破壊する目的で用いられることが両者の大きな違いといえます。どちらも硬い岩やコンクリートに対処する工具である点は共通していますが、さく岩機は打撃と回転を組み合わせて岩に穴を開けるという、削孔に特化した工作機械です。一方、ブレーカーは打撃のみのため、岩石やコンクリートを粉砕・破砕する目的で使用されます。用途や現場に応じて、最適な機械を選ぶことが重要です。
さく岩機の種類 — 用途に合わせた最適な選択肢
さく岩機は手持ち式と搭載式に大別され、用途に応じてさまざまな種類が選べます。駆動方式には油圧式や空圧式といった選択肢があります。工事内容や現場環境に最適なものを選択し、作業を効率的かつ安全に進めることが重要です。
手持ち式さく岩機
手持ち式さく岩機は、作業者が直接操作する小型の機械で、携帯性と操作性に優れています。
ジャックハンマー
強力な打撃力を持ち、コンクリートや硬い岩を削孔する際に使用されます。防振・防音設計のタイプもあります。
レッグドリル
エアーを利用したフィードレッグで推進力を生み、主に横向きの穿孔作業に適しています。鉱山や土木工事の現場で広く用いられています。
振動ドリル
ドリルの回転に振動を加えたもので、コンクリートの穴開けなどに特化したさく岩機です。小型で取り扱いやすいため、日曜大工やDIYにも使用されています。
ハンマードリル
ドリルとハンマーの機能を持っているため、穴開けと破砕作業の両方に活用できます。機種によっては、はつり作業やタイル剥がしも可能です。
搭載式さく岩機
搭載式さく岩機は、大型の重機に取り付けて使用するタイプです。主に大規模な工事現場で活躍します。
ダウンザホールドリル(DTHドリル)
鉱山での掘削やトンネル工事などにおいて、垂直に穴を掘るために用いられます。圧縮空気を使ってビットを打撃することで、効率よく岩を粉砕できます。
クローラドリル
キャタピラ付きの自走可能な掘削機械です。主に土木現場や採石場で利用されています。掘削角度を自由に変えられるため、多様な作業環境に対応できます。
油圧ショベル用アタッチメント
大型の岩やコンクリートを効率的に削孔する目的で、油圧ショベルに取り付けて使用します。建設現場や解体工事などで使い勝手の良いさく岩機です。
油圧式、空圧式による違い
さく岩機には、主に油圧式と空圧式の2つの駆動方式があります。どちらを選ぶかは、使用環境や作業内容によります。
油圧式
動作に油圧ポンプを用いるため、中型から大型の機械となっています。その分、出力が高く、非常に硬い岩や大口径の削孔に対しても効果的です。
空圧式
空圧式には小型から大型のものまで幅広いサイズがあります。価格は安めですが、排気音が大きいのがネックです。
生産性を向上させる技術革新と課題
さまざまな技術革新により、さく岩機の機能性と作業効率が向上してきました。しかし、解決すべき課題も残されています。ここでは、振動と騒音、エネルギーといった課題に対する取り組みについて解説します。
低振動・低騒音設計
さく岩機は強力な打撃力を生み出す一方で、大きな振動や騒音も同時に発生してしまいます。工事が長時間にわたれば作業者の消耗が激しくなり、振動障害のような健康リスクも懸念されます。また、騒音規制の厳しい都市部や住宅街では、高出力のさく岩機を用いることが困難です。これらの課題を解決するために、近年では低振動・低騒音設計が進み、作業者の負担を軽減する技術が開発されています。国土交通省は騒音と振動が軽減された建設機械を「低騒音型・低振動型建設機械」に指定し、その使用を推進しています。
環境に配慮した燃費効率の向上
さく岩機には、エネルギー消費量が大きいという問題点もあります。地球環境に配慮するためにも、建設機械の燃費効率を向上させる技術革新が不可欠です。駆動システムの改良や効率化により、エネルギー消費を抑えながら高い性能を維持するさく岩機が開発されています。これにより、燃料コストの削減だけでなく、二酸化炭素の排出量も抑制され、環境への負担が軽減されます。
さく岩機の選定基準
さく岩機を選定する際には、用途に応じた種類や駆動方式、ビットの選定が重要です。さらに、現場に合ったサイズや重量も考慮することで、作業効率をさらに高めることができます。
用途に応じた種類の選定
さく岩機には手持ち式と搭載式があり、それぞれに多くの種類があります。作業を効率的におこなうには、用途に合わせて最適なモデルを選ぶことが重要です。手持ち式は小規模な工事や持ち運びが必要な作業に適しています。搭載式は重機に取り付けて使用し、大規模な工事現場や鉱山などでの長時間作業に向いています。
駆動方式の選択
さく岩機には、油圧式と空圧式の2つの駆動方式があります。油圧式のさく岩機は中型から大型のものが多く、強力な打撃力が必要な大規模な工事に最適です。空圧式は小型から大型まで多様なサイズが存在し、鉱山や土木現場などで広く使用されます。ただし、空圧式は作業中に発生する騒音(排気音)が大きいため、周囲環境への配慮が必要です。駆動方式の選定は、工事内容や作業場所に応じて慎重に行うことが求められます。
ビットの選定
さく岩機の先端に取り付けるビットは、作業に適したものを選ぶ必要があります。ビットの形状や素材によって、岩やコンクリートの穿孔速度が大きく変わってくるためです。たとえば、鋭利なビットは柔らかい岩盤の削孔に適しており、平らなビットは硬い岩盤の削孔に向いています。作業内容に最適なビットを選定することで、効率的かつ安全に作業を進められます。
サイズと重量
使用する環境や作業内容に応じて、さく岩機のサイズや重量も考慮する必要があります。手持ち式の小型さく岩機は軽量で取り回しが良く、狭い場所での作業に有効です。大型のさく岩機は、重機に搭載することで広範囲の作業を効率よく進められます。また、適切なサイズと重量を選ぶことは、作業者の負担を軽減することにもつながります。